一般に「三国志」というと「小説・フィクションとしての三国志」を指す。
三国志は史実をもとにした小説であるが、このもとの史実が陳寿の記した正史・三国志である。
『三国志の武将でだれが好き?』という、雑談は三国志ファンならだれもがしたことがあるとは思うが、
ある意味でこの「三国志」の定義は千差万別である。
極端な話、同じ趙雲でも真・三國無双の趙雲もいれば、正史の趙雲もいる。
そこで、三国志のルーツを紹介したい。
元祖:三国志
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陳寿とは?
233年 生まれで蜀と晋に仕える。
ちなみに孔明没が234年なので、孔明と直接の面識はない。
ただし、陳寿が成人して、史書をまとめていた時期にはすでに諸葛亮など三国志の英雄たちは伝説の偉人になっていた模様。
裴松之
372年~
陳寿よりさらに100年ほどあとの人。
陳寿の時代には後漢~三国時代、つまり曹操・劉備・孫権たちの物語はすでに伝説になっていた。
そこで、陳寿は学術らしく、裏の取れない部分は省いたり、また当事者の時代である陳寿にはかけない内容のものもあった。(陳寿は晋につかえており、晋は魏から譲られたので、魏を正当王朝として描かざるを得なかった。劉備・孫権は反乱軍という立場。もっとも蜀出身なので、劉備には敬意を示している。)
陳寿の作成した元々三国志は、あくまで学術書なので簡素で読んでいて面白いものではない。
そこに裴松之が「こういう説もある」「こういう話も伝わっている」という異論や、注釈をつけたのが、現在までに残っている三国志のもとである。
伝説・民間伝承としての三国志
三国志の英雄たちの物語は、誰からともなく、中国の人々の伝説となった。
人々は、英雄たちに憧れた。
関羽はやがて神格化され、「関帝」とよばれ兄の劉備と同じように、あるいはそれ以上に崇められた。
周倉・関索のように、正史には登場しない架空の武将も現れた。
彼らは英雄に憧れた庶民たちが英雄関羽とともに同じ時代を駆けたかった夢の具現化といえる。
こういう史実をもとにファンタジーがつくられていく文化は中国の愛すべき民族性である。
そのファンタジーの集大成が宋~元にまとめられた「三国志平話」である。
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ただし、これは完全にファンタジーである。
そもそもの設定が、劉備・曹操・孫権達は、秦~前漢の時代の英雄たちの生まれ変わりという設定で物語が始まる。
さらに、こういった設定としてのファンタジー要素や、あまりにありえないだろという描写を省かれた物語が明代にまとめられた。
(※たとえば、長坂橋で張飛が大声をあげると、橋が崩れおちた、等)
これが、「三国志演義」である。
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いわゆる「三国志」というと、これにでてくる武将が、オリジナルのイメージ。
永遠の若武者、趙雲のイメージもすでにこの時点で完成されている。
その後、現代日本において
さらに、現代日本において、吉川英治らが、この三国志演義を元に、より日本人の感性に合うようにアレンジされた。
あるいは、注釈を入れてエピソードが紹介されている。
もっとも顕著なものが、呂布と貂蝉。
演義では、董卓討伐後、呂布と貂蝉は結ばれる。
その後も、曹操戦で貂蝉は少し登場、呂布を心配する描写がある。
吉川英治版では、貂蝉は志を果たした後は、満足な笑みを浮かべて自死する。
その後、呂布は貂蝉と似た女性を妻に娶る。
その他、次のようなエピソードも有名。
『劉備が敗戦のすえ、宿を求めて、民家を訪れた時、主人より、食事に狼の肉を振る舞われる。
しかし、翌朝になって、劉備は主人の妻の遺体を見つける。
まずしい主人は劉備に何ももてなすことができず、妻を殺して、劉備にふるまったのだ。
これに、劉備は涙を流して感激する。』
吉川英治もこういう価値観は現代の日本には合わないとわかりつつも、「これは当時の価値観では、ものすごく美談なのだ。」と注釈をつけながら紹介している。
この吉川英治版三国志を元に描かれたのが、横山光輝版三国志。
子供でもわかりやすいように更にアレンジされており、さらに上のようなグロ描写や子供にはなじまない描写もカット。
例えば、貂蝉が自殺したあと、吉川英治版では呂布は貂蝉の真意をなんとなく察し、遺体を投げ捨てて、「天下を取れば貂蝉のような美女も手に入るだろう」と気持ちをすぐに切り替えている。
横山光輝版では、わけが分からず呂布は泣き崩れる。
さらに、より小説らしい内容になっているのは北方謙三の三国志
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人物描写がさらにアレンジされている。
三国志もオリジナルが読みたいとおもったら・・・
真のオリジナルの三国志というと、陳寿の正史になるし、小説としては演義になる。
しかし、正史は基本的に「歴史書」なので物語として面白いものではない。
三国志マニアや学術研究のための本である。
演義は小説ではあるが、いわゆる「古典」である。
小説として、読みやすいのはやはり吉川版である。
北方版はやや大人向け。
性的な描写も激しい。しかも、アブノーマル。
最初に読むなら吉川版がおすすめ。